手役作りの功罪

2013/7/23 up

 麻雀プロには手役を重視するタイプと軽視するタイプに大別されます。手役派の代表的存在と言えば、日本プロ麻雀連盟(以下、連盟と略します)所属の「ミスター麻雀」こと小島武夫や、その連盟の新会長に就任した森山茂和の2人になるでしょう。例えば小島はネット麻雀サイトの「ロン2」の自己紹介の中で「手役作りは大切ですので、積極的に手役を狙ってください」とコメントしています。

 最近の若手プロおよびアマチュアの熱心な研究により、手役作りは損であるという説がほぼ確定的となっています。じっくりと手役を作っている間に他家にアガリを許す結果になるからです。特に赤ドラありのルールでせっせと手役を作るなど、まさに自殺行為そのもの。街中のフリー雀荘でも、手役派で勝ち組になっている人はほとんどいないはずです。もちろん雀荘ごとのルールにもよりますが、手役派のおじさんなど単なるカモなのです。

 小島は「魅せる麻雀」を実現するために、手役を作り続けています。ファンのためを思ってのことですので全否定はいたしませんが、明らかに損であることをファンに勧めるのは無責任そのもの。一発ホームラン狙いの手役作りなど、フリー雀荘でもネット麻雀でも負け組になるでしょう。私もそういった場所では勝つ麻雀に徹しますが、友人とのセット麻雀では安い手はなるべく作らずに手役を狙います。そのために負けることもしばしばですが、手役を作ったほうがたしかに麻雀は楽しいと思います。

 ところが小島は、誰彼かまわず「手役を作れ」と説教します。小島はいくら負けても「小島先生」と崇められ、テレビ対局にも絶対に呼ばれますし、収入に困ることもないでしょう。しかし若手プロは違います。勝たないと当然タイトル争いに加われませんし、テレビ対局にも呼ばれませんし、ファンに名前を覚えてもらえません。のんきに手役など作ってる暇はないというのが正直なところです。

 そもそも手役を作らないとファンに見てもらえないのでしょうか? いいえ、断じて違います。「四神降臨」の対局では視聴者の98.2%が「大変良かった」とアンケートに回答しました。対局した4人の中で、日本プロ麻雀協会の鈴木達也が比較的手役を作るタイプですが、深追いしすぎることは通常しませんし、他の3人は手役派ではありません。レベルの高い対局であれば、ファンは満足するのです。遠すぎる三色や一通を狙って自滅するヘタクソな麻雀でファンが喜ぶと思ったら大間違いです。

 以上が前置きで、ここからが本題です。小島や森山らは、若手プロを不当に批判する暇があるのなら、手役派が有利になるルールを作ればいいじゃないか、というのが私の提案です。彼らの発言力なら、それくらいできるでしょう。

 一例を挙げます。まず赤ドラやチップは論外。一発裏ドラはあってもなくてもどちらでも良いと思います。そして三色や一通・チャンタなどの2翻役を3翻(副露すると従来通り1翻)に格上げするのです。同様にメンホンや純チャンは4翻に格上げ(副露すると2翻)。あるいは新しい手役を創作したり、七対子とイーペーコーの複合を許したり、子の5翻を8,000点から10,000点に引き上げたり、いくらでもアイデアが浮かびます。どうです、面白いと思いませんか?

 上の手は従来のルールならツモ(1)・ピンフ(1)・三色(2)で5,200点、リーチで8,000点ですが、上記のルールに従いますとこの手はツモ(1)・ピンフ(1)・三色(3)で10,000点。リーチをかけていれば12,000点ということになります。これならせっせと手役を作る価値も少しは出てくるのではないでしょうか。

 もちろん連盟の鳳凰戦や十段戦のような歴史あるタイトル戦でいきなりこれを採用しろとは言いません。まずは小さな大会から始めてみてはいかがですか。きっと面白いと思いますよ。

HOME