もっと若手麻雀プロの台頭を

2018/9/2 up

 福地誠先生のブログに「【麻雀】若手プロ」という記事が掲載されておりました。麻雀で活躍する若手男性プロが少ないのは、Aリーグに上がるのに10年かかる世界からだということに触れています。

 それは全くその通りなのですが、この構造自体は囲碁・将棋も似たようなものです。将棋を例にとれば、ノンストップで駆け上がれば最短4年でA級に昇級できるとはいえ、それはほとんど無理なこと。有望な棋士でもだいたい10年近くはかかってしまいます。国民栄誉賞の羽生善治竜王ですら、A級で戦うことができたのはプロ入り8年目であるということを書けば十分でしょう。

麻雀は「記録」がおそろかになっている!

 麻雀と囲碁・将棋で決定的に違うのは、麻雀はタイトルを獲らないと注目されにくいという構造的な弱点を抱えていることが挙げられます。佐々木寿人プロ・滝沢和典プロのように、タイトルに無縁でも日本プロ麻雀連盟(連盟)がゴリ押しして強制的に目立たせるという例もありますが、これは少数派なので本稿では割愛します(滝沢はのちに王位を獲得、寿人は現在もまだ主要タイトルは無冠)。

 囲碁・将棋だと、タイトル挑戦に満たなくてもある程度の成績を残せば自然と目立ってきますし、専門雑誌にもけっこう取り上げられます。勝率7割というのがひとつの目安になっているかなと思います。「最高勝率」を残した棋士は毎年ホームページ掲載されます。

 麻雀だと、そもそもすべての対局の牌譜を採っているわけではないので、記録を残しにくいという面があるのかもしれません。そんな事情から生まれた迷言が、連盟の超有名プロによる「君んところ影響しない卓だから早く終わらせてね」「空気よんでね」という信じられない発言です。「自分にとって消化試合であっても全力を尽くす」という米長哲学がある将棋と比べて、なんと寂しいことでしょう。

 そうした記録面の貧弱さを裏付けるかのように、連盟のホームページも収入に直結する宣伝ばかり前面に出て見にくくなっています。以前よりは少しばかり見やすくなったような気はするのですが、囲碁や将棋と比べるとまだまだです。例えば「3年前の王位戦の予選の成績表を見たい」と思ったときに、連盟のトップページからどうたどればいいのか? 普通の人だとお手上げでしょう。

麻雀こそ記録のゲームだ

 「日本将棋連盟のホームページ」のトップページからは、ワンクリックで記録のページに飛ぶことができ、勝数・勝率・連勝などの記録をすぐさま調べることができます。ここを見れば、今最も波に乗っている若手が誰であるかも、ある程度分かることでしょう。

 しかし、麻雀はもっともっと多くの記録を集計できるゲームではないか? 私はそう思うのです。トップ率・ラス率・副露率・放銃率といった基本的項目をはじめ、アガリの平均巡目、流局時テンパイ率、平均打点、果ては愚形リーチ率、追っかけリーチ率、副露時3,900点以上率、副露平均巡目、さらにもっとマニアックなデータまで存在します。

 タイトルには手が届かなくとも、これらのデータを生かして若手を売り出すことは可能なのではないでしょうか。むろんこれらのデータはホームページで積極的に公開すべきです。「放銃率たった4.8%! 滅多に放銃しないAプロ」「愚形でも平然と追っかけリーチをかけるBプロ」とかいかがでしょう。あるいは各手役ごとのアガリ率を集計し、四神降臨で各団体の役満回数ナンバーワンを集めたり、対子手のアガリ率が高い人を集めて対局したり。色々とできることはあると思います。

 これには牌譜を採ること、そして分析することが前提となるので経費はかかると思います。なので全公式戦を集計しろとは軽々しく言えませんが、まずは各団体のリーグ戦のBリーグ以上の全対局だけでも分析して大々的に公表してはどうでしょう。水着姿でカレンダーの撮影をするよりは、よっぽど麻雀界のためになると思うのですが。

 上層部の意に沿う人だけを売り出したいであろう連盟には上記のことは勧めませんが、エンターテイナーの多井隆晴プロや、いち早く一発・裏ドラを最高峰のリーグ戦に採用した新津潔プロなどにはぜひお勧めしたいです。あとはこの拙稿を読んでくださることを祈るばかり。

 なお、本コラムは2015年12月に完成していたのですが、アップするのを忘れていたようです・・・。一部現在と状況が異なる部分もあるかもしれませんが、敢えてほぼそのままアップしました。

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