日本プロ麻雀連盟(以下連盟)の前原雄大プロが、2011年の第28期十段位戦決定戦のニコニコ生放送の中で「連盟というのは唯一のプロ団体と認識してますから」と驚くべき発言をしました。いったい連盟のタイトル戦のレベルはどんなものなのでしょうか。その第28期十段位戦決定戦で私が拝見した対局の中からいくつかピックアップしてみましょう。
対局者はディフェンディングチャンピオンの堀内正人十段に、森山茂和九段、瀬戸熊直樹鳳凰位、石渡正志七段、三戸亮祐五段の5名。全12回戦の中の2回戦。まだ1日目ということで、ある程度自由に打てる状況です。南1局1本場、2着目の瀬戸熊が1巡目から役牌のを鳴いて積極的に動きました。その捨て牌が
となっており、誰が見てもソウズの一色手でしょう。これに対し上家の石渡(トップの堀内と16,200点差の3番手)の手牌は以下の通り。
なんと石渡はここからをツモ切り! これは驚きました。下家の瀬戸熊こそソウズの一色手ですが、堀内と三戸は合計でソウズを5枚、ワンズを3枚切っており、ピンズはゼロ。つまりソウズが高いという状況ではありません。むしろピンズのほうが高く思えるくらいです。
私ならを切ります。この手は先にペン
を引いたときはピンフドラ1の3メンチャンになりますが、
が先ではただのクズ手です。したがって、先に
を引いたときのみ
を勝負。ワンズが先であればテンパイを崩して
を落としていくのが無難でしょう。前述の通りピンズが高めなので
にくっつく保証がないのです。実際、配牌の時点で
と
は他の3人に4枚とも持たれていました。
さて、実戦ではは無事に通過しましたが、2巡後にツモ切りした
は瀬戸熊に234でチーされてしまいました。次巡に
を引かされて、ここで
を切って回るハメになりましたが、これは手順が違います。相手に急所を鳴かせてからオリるのでは遅すぎるのです。しかし、問題はこれだけではありません。トップ目の親の堀内が負けじとピンズの混一色で仕掛けていますが、その手牌が以下の通り。
4回戦の東2局1本場。西家の瀬戸熊がと
をポンし、捨て牌が
となっています。トイトイが本線ですが、混一色もありそう。下家の三戸はこんな手牌でした。
ドラ3枚のチャンス手。とはいえ、この手牌からなんと切り! これは見ていた人間もズッコケたでしょう。瀬戸熊はこれをありがたくポンし、混老頭のおまけまでついて混一色トイトイの倍満のツモアガリとなりました。そして瀬戸熊がこの半荘もトップとなります。
「後から切るとロンされる危険があるから、先に切ってしまえ」という初心者理論での切りでしょう。これが「唯一のプロ団体」とやらのタイトル戦の悲しいレベルです。まだ1日目でしたが、もはや見る価値が全くないことは明々白々。解説陣にも相当不愉快な思いをさせられましたが、これは後日書きます。
2010年の第35期最高位決定戦のDVDはかなり楽しめましたが、連盟のタイトル戦は二度と見ることはないでしょう。これならネット麻雀の強者たちを観戦しているほうがはるかに有意義です。