森山茂和新会長2

 2013/8/24up

 2013年4月に日本プロ麻雀連盟(以下連盟)の3代目の会長に就任された森山茂和プロが、翌5月に満を持して新著を出版されました。「麻雀 プロはこう読む」というタイトルです。不幸にも新品で購入してしまったという友人の感想は「昭和にタイムスリップしたかと思ったよ」というものでした。その友人が300円で譲ってくれるというので入手して読んでみましたが、これがまた凄まじい内容なのでした。

 主に相手のリーチの待ちを読むという内容なのですが、この時点で昭和を感じさせます。終盤ならまだしも、序盤や中盤のリーチを読もうとしても無駄なことが多いのです。なぜなら、待ちを特定できないことのほうが圧倒的に多いからです。そもそも、ベタオリまたは全ツッパする場合、相手のリーチなんて読む必要はほとんどありません。もちろん捨て牌次第では、かなり待ちを絞ることができる場合もありますが、頻度としてはそれほど高くありません。

 したがって、リーチの捨て牌を読むというコンセプト自体に私は疑問を感じるのですが、内容も酷いものでした。どうぞご覧ください。

◇           ◇           ◇

<東家(自分)の手牌>

<リーチをかけた南家の捨て牌>
            ×    ×  ×            ×    注:×はツモ切りです。
(リーチ)

<リーチをかけた西家の捨て牌>
      × ×       ×            ×  ×    注:×はツモ切りです。
(リーチ)

 【プロはこう読む】
<南家の待ちは?>
 字牌、1・9牌からの切り出しから見てピンフ形の手と見ていい。
 そのピンフ模様の捨て牌の中で光っている牌が2枚ある。だ。1枚ポツンと切れていてピンズが他に1枚も切れていないリーチは、ピンズのイッツーによくある捨て牌だ。は筋でもマークすべき牌だ。次に。対抗は、を切ってでも残しておいたのまたぎ筋だ。もマークすべきだろう。

<東家はどう打つべきか?>
 の筋だからといってが通る保証はない。西家のリーチは待ちは薄いが、確実に通るとは言えない。しかし、東1局、親番であり、リーチ後にドラを引いて好形の1シャンテン。こうなったら思い切って勝負する手だ。切りも手堅いがチャンス手でもある。危険覚悟で切り。

◇           ◇           ◇

 ピンズが一枚しか切れていないというだけでは、ピンズの一通とは読めません。もちろん一通であることもありますが、そうでないことのほうが圧倒的大多数です。こんなのは「読み」ではなく「思い込み」としか言えません。森山は危険な筋を5つも6つも挙げていますが、これじゃ現物以外は切れないというのと一緒。だから私は「リーチを読もうとしても無駄なことが多い」と冒頭に書いたのです。

 今回は東1局なので全員原点です。2人リーチがかかっていますので、親とはいえ1シャンテンから危険牌を打つのは得策ではありません。仮にタンピンドラ1でリーチすれば親満ですが、それも「有効牌を引いてテンパイして危険牌が無事通過し、なおかつ他の2人より先にアガれば」という厳しい条件付きです。1シャンテンの段階では勝率0%であるということを忘れてはいけません。実戦ではを切っていますが、これが正解でしょう。親ですから、テンパイすれば勝負でもOK。ただしを引いてテンパイしたときは、南家の現物である切りです。
 ちなみに実戦での南家は一通のペン待ち、西家はピンフドラ1の待ちで、西家が南家からアガっています。

◇           ◇           ◇

<北家(自分=46,300点)の手牌>
  ポン  ツモ  ドラ

<リーチをかけた東家(18,400点)の捨て牌>
 ×         × ×  ×  ×    × ×  ×    注:×はツモ切りです。
(リーチ)

 【プロはこう読む】
<東家の待ちは?>
 親リーチは逆襲の口火を切る3メンチャンリーチだろう。待ちは
 ツイてない東家の待ち牌は場に多く切れ、しかもツイている者の手にアンコで入っている。これはよくある現象だ。親の手はドラを1枚使ったピンフ。が入り目ならタンピンになっているだろう。

◇           ◇           ◇

 これがプロの読みなのだそうです。皆様いかがでしょうか。森山は持ち点が18,400点であるという理由だけで「ツイていない」と断定し、この捨て牌だけで「3メンチャンだろう」と推測しておられます。これはやはり読みではなく、単なる「思い込み」というものです。言うまでもありませんが、この捨て牌から3メンチャンと読むことは不可能ですし、ピンフであると確定する材料もありません。親なのですから、愚形リーチだって十分にあり得るのです。

 全体牌譜は省略しましたが、北家からはが3枚見えているので、の3メンチャンは「トリプルワンチャンス」です(4枚目のをすべて東家が持ってないと成立しません)。終盤のワンチャンスはあまり当てにならないとはいえ、確率上は低いと判断するのが妥当です。これだけを考えても、森山の「読み」はピンボケなのです。

 「ツイてない人間の待ち牌がツイている者に暗刻になりやすい」というのも単なる迷信です。そのような気持ち悪い現象が頻繁に起こるというのなら、「ツイている人間は暗刻ができやすいからピンフ手になりにくい」とでも本気で主張なさるのでしょうか。「今日はやぎ座の人は全員運勢が良い」と言っているのと何ら変わりありません。

 ちなみに・・・。実戦での東家は234三色のカン待ちでした。

◇           ◇           ◇

 それでは実戦での森山の「読み」とやらはどの程度のものなのか、ひとつ実戦譜を引っ張り出して検証してみるとしましょう。今回は第4回モンド21名人戦(2010年)の決勝戦第1局を見てみます。決勝戦は予選の点数を持ち越さず、半荘2回戦で争われます。対局者は荒正義、五十嵐毅、新津潔、そして森山(50音順)の4名です。

 東1局1本場で森山が荒のリーチに対して一発で満貫を放銃。東3局1本場では荒の仕掛けに対して満貫を放銃。東4局1本場では親の荒のリーチに対して3,900点を放銃。なんと東場だけで荒1人に約2万点も振り込んだのです。3度とも森山はリーチをかけておらず、守ることは可能な状態でした。同じ団体の荒に勝たせようと思ったのではないか、と勘繰りたくなるほどの酷い放銃劇でした。

 そして南2局0本場。この時点でトップ目の荒が51,600点、ラス目の森山がたった2,000点と、見るに堪えないほどの大差がついていました。そんな状況で五十嵐(3着目)がドラ切りでリーチをかけてきました。

(リーチ)

 西家の森山の手牌は以下の通りです。

 森山はなんとここからを打って満貫の放銃となりました(一通のカン待ち)。たしかにはション牌で、四暗刻の2シャンテンで三暗刻の1シャンテンではあります。しかし両方ともものすごく受け入れが狭く、かなりの強運でテンパイしてもツモアガリ限定です。ここから四暗刻を物にするには、おそらく五十嵐に対して3枚、4枚…と危険牌を連打していく必要がありますが、これは地雷原の上を歩くような自殺行為です。半荘1回勝負ならリーチに向かっていくのもひとつの手でしょう。しかし前述の通り、これは半荘2回戦です。この半荘がダメなら次の半荘があるのです。

 現物こそ1枚もありませんが、「プロの読み」で通りそうな牌を探すことは可能だったでしょう。ちなみに「ドラ切りリーチにソバテンなし」という古い格言もありますが、現代麻雀において何の役にも立たないことはこの結果を見ても明らかです。もちろんこんなものは「読み」などとはとても呼べません。。

 この甘い放銃の結果、森山は事実上「目無し」となり勝負のバランスが完全に崩れてしまいました。点差があるため五十嵐や新津の打ち方にも制約が生まれ、荒の独壇場となってしまいました。最終結果は、荒88,400点、新津18,800点、五十嵐1,500点、森山−10,700点。1回戦目で99.99%優勝の行方が決まってしまい、実につまらない決勝戦になってしまったのでした。結局「プロの読み」とやらは、本を見ても実戦対局を見てもどこにも見当たりません。

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