瑠美本という地雷

 2024/6/29up

 2024年1月、満を持して? 二階堂瑠美プロが「Mリーガー二階堂瑠美 守破離の麻雀」を発売しましたが、これがまたすさまじい本なのでした。もちろん悪い意味で。ここではその内容を少しだけ紹介していきましょう。

例1

 この切りに対していろいろ意見が出たことには「そんなに言われるんだ」って驚きました。私の中では全然変わった一打だと思っていないんですよね。もちろん、真っすぐ手を進めるのであれば孤立のを切ったほうがいいことは分かっています。
 とかを切って真っすぐ打つ人は、この手牌からを鳴いたり、とかのシャンポン待ちリーチをイメージしたりしているのだと思いますけど、私にとってこの手牌のマックスは456、567などに仕上がったピンフ三色のリーチなんです。そこで不要な字牌とドラのは基本使わない構想で、ただドラのだけは重なったら採用、そのときはのトイツ落としでを鳴いて5800以上、みたいな構想でした。そう考えると、この手牌で一番いらないのはということになるわけです。(中略)

常識から離れるなら 打
形をスリムにして守備力を保ちつつ、手役やドラを使った打点アップを見据えた、攻守兼用の一打。自身の手の未来や相手の出方などをしっかりと考えて、いろいろな構想を持つことが大事だ。

 まだ3巡目でこの後チートイツになるかもしれませんし、ピンズでイーペーコーができるかもしれないのですが、瑠美プロの目にはなぜか三色しか見えていないようです。を切ってしまうと、当然チートイツもイーペーコーも作り損ねてしまいます。実際この後を引いてますし。そもそもション牌で安全牌でもないを残すこと自体意味不明です。

 実戦では次巡を引いて切り。ますます前巡にを残した意味が分かりませんね。「攻守兼用の一打」だそうですが、チートイツやイーペーコーの可能性を捨ててション牌の字牌を残すことがなぜ「攻守兼用」なのか? 攻撃も守備も破綻しきっています。

 瑠美プロの文章を読んでいるとどうやらが不要牌にしか見えておらず、先に処理したということのようですが、完全に必要な牌です。不要なのは現時点で安全牌とも言えないしかありません。ちなみに本書には収録されていませんが、この局の瑠美プロはこの先も誤打のオンパレードとなっており、話題を呼びました。

例2

 この手はドラのを使えるのと、安目のがすでに3枚見えていたので、リーチもダマテンもあるなと思っていました。(中略)この手はドラも赤もないタンヤオピンフで、高目でも一発や裏が絡まなければ3,900止まりです。だったらピンズのまわりを伸ばして三色とかにすれば、ダマテンでも満貫が狙えますよね。(中略)
 あと、まだ東2局とは言え私はトップ目ですし、供託も1本あるので、ダマテンでアガって局を進めるのも悪くない結果です。あと、ドラも赤もない手でリーチをして、ドラをたくさん持っている相手に押し返されて返り討ちに遭うのって、よく見るじゃないですか。(中略)
 そこから思い直してリーチをかけたのは、ダマテンのとはいえ、簡単に出てくる牌でもない感覚があったので、ツモりに行こうとしてのことでした。(中略)
 結果は、追っかけリーチの仲林さんの宣言牌がで、3,900の出アガリでした。この局はいろいろ考えてツモ切りリーチになりましたけど、基本は即リーチを推奨です。あと、流れ的な意味でも、やっぱりリーチ。南家なので自分がアガって親番を持ってきたい、という体勢論の話ですけど、気にする人はそういうことを頭に入れておいてもいいのではないでしょうか。

 あまりに長いので重要度が低そうな部分をカットしましたが、それでも長いうえに普通の人には理解不能です。7巡目に3メンチャンでテンパイしたがダマテンにし、2巡後にツモ切りリーチを敢行してアガったというお話ですが、参考になる部分は全くありません。この文章で読者に何を解説したかったのでしょうか?

 まともな解説をするならば、が3枚切れだろうと、ドラや赤が見えていなかろうと、この手牌では7巡目の時点で即リーチをかけるべきです。南場ならまだしも、東2局でトップ目というのもダマにする理由にはなりません。「3,900止まり」と書いていますが、1本場で供託があるので5,200点は「東2局とは言え私はトップ目」であることを考えれば十分すぎる収入でしょう。流れ云々については、どこか遠いお国の宗教のようで一般人には理解不能。

 「ドラをたくさん持っている相手に押し返されて返り討ちに遭う」は、明らかに怖がりすぎ。そんなレアケースを怖がっていては麻雀になりません。先制のほぼ3,900点以上のリャンメン待ちに怖いものなどないのです。そして、よくよく相手の捨て牌を見れば分かると思いますが、他家の中に早そうな人は誰もいませんね。だったらなおさら、先制リーチで相手を押さえつけるべきです。

 ピンズを伸ばして三色云々に至っては、まるっきりお話になりません。東京から大阪に行くのにハワイを経由するような遠回りをしている間に、他家に先攻を許してしまうでしょう。周りのレベルが低ければまだしも、Mリーグではそんな鈍行は許してくれません。それよりは即リーチで一発や裏ドラに期待するほうがはるかに良いですし、それ以前に3,900+1,300の5,200点で収入に不満はないのです。安目の2,000点でも全く問題ありません。

例3

 こういうときは、シンプルにターツを探すのがいいんじゃないかと思います。とかとかはターツの元になりますし、ソーズが雀頭で2メンツ想定と考えれば、アガリに必要な4メンツ1雀頭はできますよね。字牌は安全牌候補でありつつ重なるとうれしい牌でもあるのでキープすると、切るのはトイツ落としになります。(後略)

 結論から書けば、上の手牌のトイツ落としは完全な誤打で、切りが正解となります。

 ション牌のを安全牌候補と考えているのも閉口ですが(実際に上家の瀬戸熊プロがトイツです)、それ以前に明確に早い他家がいない序盤で安全牌を手の内に溜め込むこと自体が間違っています。自分の手がバラバラなら別ですが、ある程度勝負になるのであれば攻めなければ麻雀は勝てません。安全牌を持てば持つほど、自分の手の進行は当然遅くなるわけですから。

 瑠美プロは手牌を横に伸ばすことしか頭にないようですが、が横に伸びる保証などどこにもありませんし、ソウズが異様に伸びて3メンツできることだってあります。さらにが暗刻になる可能性が頭からスッポリ抜け落ちているのは致命的ですね。

 実戦ではマンズが伸びて12巡目にリーチ、14巡目に2000オールをアガることができましたが、アガれば正解というものではありません。

例4

 は浮かせただけです。ここから456、567の三色とかも狙えるなら狙いたいので、結構こういう打ち方をするんですよね。好きなんですよ。トイツのがかなりの安全牌なので、ここで守備力を担保しながら手牌が高くなる変化だけは逃さないように意識して打ちます。
 この手はアガるなら打点を作りたいんですよね。1,500をアガってもう1局だと、あまり状況は変わっていないですから。このときの意識として、を切った時点では字牌4枚は全部切ろうとまで思っていました。もちろんが暗刻になってのリャンメン待ちとかになればリーチすることもありますけど、基本はリーチタンヤオピンフを狙う、という感じの手組みです。(後略)

 上記の文章は全編意味不明。皆様はこんな酷い打ち方を参考にしてはいけません。言うまでもありませんがこんな手牌から456・567三色狙いなど、白馬に乗った王子様を待つのと同じくらい可能性が低いです。瑠美プロの麻雀は、まるで他の3人が全員チョンボでアガリ放棄になっているような、能天気な打ち筋です。そんなことをしている間に、他家が虎視眈々と反撃を狙っているというのに。

 「手牌が高くなる変化だけは逃さない」とのことですが、を切ってしまうとを引いてメンゼンでテンパイする変化を逃してしまいます。三色になるより、こちらのほうがよっぽど可能性が高いのですけど。

 上図では打こそが唯一の正解で、ほかは全部誤打と言っても過言ではありません。瑠美プロは1,500点で終わることを恐れているようですが、絡みのリーチなら最低でも3,900点はあり、一発や裏ドラなどがあればもちろんもっと高くなります。赤は3枚すべて受け入れ可能ですし、あたりを引けばイーペーコーも狙うことができるので、遠すぎる三色など狙わなくても高くなる変化がいくつかありますね。

 それ以前の問題として、13,400点差で2着目の丸山プロは当然反撃を狙っていますので、もしもの時にはを鳴いてさっさと流す準備もしなくてはいけません。にもかかわらず、瑠美プロは字牌4枚を全部切ると寝言をおっしゃっておられます。そんなことをしている間に丸山プロに満貫・ハネ満でもアガられたら大失態なのですが。

 相手がいない1人麻雀なら三色狙いも面白いですが、麻雀は4人で打つものであるという基本中の基本事項をお忘れのようです。こちらも実戦では瑠美プロがアガっていますが、結果論以外の何物でもありません。

総評

 一応最後に補足しておきますが、私は瑠美プロのアンチではないどころか、むしろ女性プロの中では好きなほうです。サインも持っています。でもそれとこれは別問題。いくら好きでも、これは戦術書としては失格レベルです。ただし令和の今だからこそ、昭和の香りがプンプン漂う本書はある意味貴重かもしれません。そういうのがお好きな方はぜひご購入あれ。

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