連盟偏重の人選

 2013/10/16up

 テレビ対局その他を見ますと、日本プロ麻雀連盟(以下「連盟」と略します)所属のプロ雀士であふれ返っています。むろん実績のあるプロであれば何も問題ないのですが、実は半分くらいは何の実績も残していないプロであり、連盟の政治力の強さを物語る結果となっています。連盟がうまくメディアを活用している、と評することも可能ですが、将棋や囲碁のようなガチンコの世界にはほど遠いわけでもあり、私は寂しい気持ちのほうがはるかに大きいです。

 ちなみにここでの「実績」とは、鳳凰位・最高位などのタイトル獲得実績などをさします。たかが8名程度のテレビ対局での優勝など価値は低いですし、(プロは)半荘数回打っただけで優勝可能な麻雀最強戦(竹書房主催)も私は実績と認定しません(激戦の予選を勝ち抜いたアマチュアの優勝は素晴らしいと思います)。ではまず、例として第9回女流モンド杯(2011年)の人選と結果を見てみましょう。2年前ではありますが、テレビ対局の結果に関する記述がありますので、ご注意ください。なお、実績は放送当時のものですので、それ以後の実績は含みません。

名前 所属団体 予選成績 決勝成績 主な実績
浅見真紀 最高位戦 1位 4位 第9回野口恭一郎賞・女流棋士部門優勝(2010年)
石井あや 最高位戦 2位 優勝 第10期女流最高位(2010年)、第8期プロクイーン(2010年)
涼崎いづみ 最高位戦 3位 2位 第5期プロクイーン(2007年)
和泉由希子 連盟 4位 3位 なし
清水香織 連盟 5位 第27期王位(2001年)、第2期プロクイーン(2004年)、第5期女流桜花(2010年)
二階堂瑠美 連盟 6位 なし
二階堂亜樹 連盟 7位 第3期プロクイーン(2005年)、第2・3期女流桜花(2007・08年)
鳳凰戦A2リーグ所属(2013年は産休のため休場と思われます)
宮内こずえ 連盟 8位 なし
※野口恭一郎賞(女流棋士部門)で優勝すると、自動的に女流モンド杯の出場権が与えられるため、主な実績に記載しました。
※「最高位戦」とは、最高位戦日本プロ麻雀協会のことです。

 ご覧の通り、自動的に出場できた野口賞の浅見を除きますと、連盟5:最高位戦2という不平等な数の論理。しかも連盟の5人中、3人はさしたる実績ナシ。おまけにこの時は連盟所属のプロはことごとく惨敗し、決勝には和泉1人がギリギリ滑り込んだだけ。そして決勝でも和泉は石井に約150ポイントもの大差をつけられて大敗しました。

 麻雀界にあまり詳しくない方の中には、和泉や宮内が連盟内でタイトルを獲りまくっていると勘違いしている方が多いようです(私の友人にもいました)。連盟の工作活動(?)の成果ですね。一応擁護もしておきますが、二階堂亜樹はA2リーグにも所属している強者です。2012年度までは佐々木寿人よりも上のクラスだった、と書けば分かりやすいでしょうか。2013年現在、A2リーグに所属している女性プロは二階堂亜樹と黒沢咲だけです。A1リーグに女性はいません。ちなみに和泉と宮内はC1リーグですので、二階堂亜樹のほうが数段格上なのです。

 それから清水は女性で初めて王位のタイトルを獲得しています。これは素晴らしいですよ。そういえば、主なタイトル獲得実績が王位1回しかないというある男性プロの方が連盟の会長にご就任されたような…。私の気のせいでしたでしょうか。・・・さて繰り返しますが、清水は素晴らしい打ち手だと思います。

 色々な考え方があるのは承知の上ですが、私はこういう強者たちの対局が見たいのです。個人的にはルックスなんかどうでも良いです。たしかに将棋や囲碁にもルックス先行で人気がある女性プロは存在します。梅沢由香里(旧姓)さんとか、高橋和さんとか。しかし彼女たちは、あくまでも聞き手などのサポート役として重宝されただけであり、NHK杯などのテレビ対局に優先して出してもらえることなどありませんでした。いかに麻雀のテレビ対局が甘く、価値の低いものになっているか、これだけでもお分かりいただけるでしょう。ちなみに囲碁や将棋のNHK杯は、優勝者には推定400〜500万円もの賞金が支払われますが、モンド杯は50万円だそうです(女流モンド杯は不明)。

 なぜモンド杯で連盟が不当に優遇されているのでしょうか。推測するに、連盟(の関連会社)が運営する「ロン2」のCMをバンバン打ったり、モンドの牌譜を連盟のシステムで提供したりなど、連盟が主要スポンサーであるからなのではないでしょうか。もちろんテレビ業界ではスポンサーの意向を取り入れるというのは珍しいことではないのですが、ここまで実力・実績無視であからさまな贔屓をやられては、見ているファンに対してもたいへん失礼です。

 さて。5対3という数的優位を生かせず第9回女流モンド杯で大惨敗を喫した連盟。すかさず次の一手を打ちました。翌年の第10回女流モンド杯からは出場雀士を8名から12名に増やし、しかも増やした枠の大半を連盟雀士で埋めたのです。なるほど、えげつない作戦です。それでは今年(2013年)の第11回女流モンド杯のメンツを見てみましょうか。今回はネタバレ防止のため結果は書きませんので、ご安心ください。五十音順に記載します。

名前 所属団体 主な実績
石井あや 最高位戦 第10期女流最高位(2010年)、第8期プロクイーン(2010年)
和泉由希子 連盟 なし
魚谷侑未 連盟 第6・7期女流桜花(2011・12年)
黒沢咲 連盟 第6・7期プロクイーン(2008・09年)、鳳凰戦A2リーグ所属
清水香織 連盟 第27期王位(2001年)、第2期プロクイーン(2004年)、第5期女流桜花(2010年)
涼崎いづみ 最高位戦 第5期プロクイーン(2007年)
高宮まり 連盟 なし
二階堂瑠美 連盟 なし
水城恵利 協会 第11回野口恭一郎賞・女流棋士部門優勝(2012年)
水瀬千尋 協会 第7回夕刊フジ杯優勝(2012年)
宮内こずえ 連盟 なし
和久津晶 連盟 第9期プロクイーン(2011年)
※第6回より、夕刊フジ杯優勝者がプロである場合は自動的に女流モンド杯の出場権が与えられるため、主な実績に記載しました。
※「協会」とは、日本プロ麻雀協会のことです。

 一目瞭然ですが、今度は8対2対2という圧倒的な連盟の数的優位を作り上げました。しかも水城・水瀬はテレビ対局の経験が浅いので、緊張で実力を発揮できない恐れも大です。これで「唯一のプロ団体」と自称する連盟が勝てなければ、ウソみたいですね。ちなみにこれを執筆している時点ではまだ最終結果は知りませんので、この文章を深読みしないでくださいね。

 高宮まりというのは、グラビアの真似事みたいなことをやっている若手の女流プロです。おそらくちょっと人気が出ているんでしょう、何の実績もないのにテレビ対局出場決定です。現役の女流最高位や女流雀王のタイトルを持っているプロが出られず、半グラビアアイドルが出られるんですね。まったくふざけた話ですよ。

 私は清水香織や石井あや等の麻雀を高く買っている人間ですので、そういった雀士の真剣な対局を見たいのです。何の実績もない雀士が大勢混じることで、対局の楽しみがかなり薄れてしまいます。そんなにアイドル雀士の対局がやりたいなら、「水着だらけの麻雀大会」という別番組でも作ってやればいいのに。そうすれば見なくて済むのですが。

 第11回女流モンド杯も相当酷いですが、「麻雀最強戦2013 鉄人プロ代表決定戦」に至っては、もはや狂気の沙汰としか思えない狂った人選でした。この対局の生放送は終了しておりますが、この先に一部対局結果の記載がございますので、DVDでご覧いただく予定の方はご注意ください。

名前 所属団体 主な実績
荒正義 連盟 第8・28期鳳凰位(1991・2011年)、第5・29期王位(1977・2003年)
第12期マスターズ(2003年)
井出洋介 麻将連合 第19期最高位(1994年)、第16〜18、20、25期名人(1985〜87、89、94年)
金子正輝 最高位戦 第9・11・12・24期最高位(1984・86・87・99年)、第10期八翔位(1993年)
第10期名翔位(1999年)、第21〜23期名人(1990〜92年)
小島武夫 連盟 第3・4期最高位(1978・79年)
藤崎智 連盟 第16期十段位(1999年)
藤原隆弘 連盟 なし
前原雄大 連盟 第12・25期鳳凰位(1995・2008年)、第14・15・24〜26期十段位(1997・98・2007〜09年)
森山茂和 連盟 第9期王位(1981年)
※30年以上も前の大昔の実績については、赤字で記しております。

 見ての通り8人中6人が連盟雀士。内訳は実力・実績のある雀士が4人、実力・実績不足が2人、「昔の名前で出ています」が1人、「鉄人」枠にはまだ早すぎる人が1人。こんなメンツの麻雀を見て、何が楽しいのでしょうか。例えば予選A卓は荒・金子・藤原・前原の4名でした。荒・金子・前原は実績もあり、現在の実力も十分です。ここにもう1人最高のメンバーが加われば素晴らしい麻雀が見られたでしょう。しかし残念ながら、こないだ(主な実績には含まれない)何かの大会で優勝したらしい、藤原が4人目のメンツだったのです。その藤原、信じられない甘い打牌をしてしまいました。

 これが南1局での配牌。この時点で藤原は41,300点持ちでトップ目、2位に約16,000点の差をつけていました。2位までが決勝卓に進めるルールでもあり、この配牌なら守り9割攻め1割という意識で打つべきでしょう。私なら七対子も見て切りですが、実戦での藤原は切り。チャンタを意識した打牌で、これは悪くありません。しかし2巡目にを引いて切り。これはあり得ない大悪手でした。守りのことを考えてもあり得ない一打です。まさか本気でチャンタ三色でも作りに行ったのでしょうか。
 実戦ではこの後国士無双の有効牌を引きまくりました。もしを残していれば、6巡目に待ちの国士テンパイが超特急で入るところだったのです。捨て牌が派手でなかったので十分にアガリが見込めました。実際、9巡目に荒がを切っています。この半荘は前半の貯金があったので、3位金子の猛追を受けながら辛くも藤原が逃げ切ってトップを取りました。言うまでもなく、国士無双をアガっていればもっと楽勝になるはずでした。そして32,000点の放銃を免れた荒は、2位で決勝卓に進出しています。

 藤原とは違い、これといって大きなミスをしていない金子・前原がそれぞれ3位・4位に沈みました。これが麻雀というゲームの面白いところでもあり、つまらないところでもあります。少なくとも見ている側としては、とても名局には見えませんでした。最高のメンツが4人集まれば「四神降臨」のような神対局が生まれますが、1人甘いメンツが入るとこういう凡牌譜しか残らないのです。惜しいことかな。

 お笑い界を引っ張る企業に「吉本興業」があります。面白い芸人を多数抱えますが、あまりにも事務所の力が強いので、少しも面白くない芸人もテレビに出まくっています。お笑いとは関係ない番組にまで吉本芸人があふれ返っています。どんな素晴らしい番組でも、つまらない芸人が1人出しゃばるだけで台無しになることもあります。この吉本興業を連盟に当てはめてみれば、実にピッタリくるとは思いませんか? 何の実績もない連盟雀士が1人卓につくだけで、神対局が一気に台無しです。連盟がテレビ対局をつまらなくしている、と極論することもできるでしょう。

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