2018年10月に開幕したMリーグ。もう一度おさらいで概要を簡単に説明しますと、主要5団体(連盟、最高位戦、協会、麻将連合、RMU)に所属するプロが参加可能で、プロ野球のドラフトのような形で所属チームを決定。各チーム3名のプロが所属し、各チーム80戦のリーグ戦を行います。上位4チームが24戦のファイナルシリーズを行い、優勝チームを決定します。
Mリーグ機構の塚本泰隆氏は、「AbemaTVMリーグ中継の視聴数は30万〜40万程度で、Mリーグが始まる前の麻雀チャンネルと比較すると約1.5倍の伸び率。全体の20〜25%程度を女性が占めており、新たな取り込みも少しずつできている」という力強いコメントを残しています。
とはいえ、AbemaTVの月間視聴数上位は将棋の中継やアニメの放送などが占めており、Mリーグはほぼトップ10圏外。Mリーグとしてはもっと上に行く余地があるとも言えます。まだ初年度が終わったばかり。ここまでの結果でどうこう言える状況ではありません。
ちなみにAbemaTVは見逃し配信もあるので、過去の対局も視聴可能です。ページを見るとおおむね25k前後の数字が並んでいます。1kは1,000のことなので、各対局およそ25,000人が見た計算です。厳密なカウント方法は非公表ですが、「視聴数」はどうやらアクセス数のことのようなので、数秒だけアクセスした人も含めて25,000人という数字なのだと思います。これはあくまで見逃し配信の数字なので、多いのか少ないのかは何とも言えません。
2018年11月16日の対局から。南1局6本場、供託リーチ棒2本。ここまでの得点状況は勝又健志プロ(風林火山)がダントツで61,200点、続いて小林剛プロ(Pirates)が21,300点、魚谷侑未プロ(フェニックス)が11,200点、ラスが高宮まりプロ(麻雀格闘倶楽部)で4,300点という並び順です。捨て牌は以下の通り。
東家・勝又
南家・小林
西家・高宮 (リーチ)
北家・魚谷 (リーチ)
そしてコバゴー(小林剛プロ)が以下の手牌となりました。
見ての通り四暗刻テンパイ。ツモれば約4万点の差が一気にひっくり返りますし、出アガリでもトイトイ・三暗刻に三色同刻がついてハネ満あります。解説の村上淳プロは「当たるけど切るんじゃない? 切ったらカッコ良すぎるけどね」と興奮気味にまくしたてました。
しかし冷静に状況を考えてみればコバゴーは2着目であり、自分のアガリ牌であるは2枚切れではドラ表示牌にあるため、見た目でも残り1枚。その残り1枚も他家に持たれている可能性も十分あります。それで2軒リーチに向かっていくのがはたして得策なのかどうか。役満が20万点なら行く価値もありますが、満貫のたった4倍、32,000点しかないのです。
コバゴーは考えた末に切り。ちなみには魚谷プロのリーチ・ピンフ・ドラ1に当たりで、見事な放銃回避となりました。村上プロは「すごいロボだね」「四暗刻オリる人なかなかいないですよ」と絶賛しました。
ちなみに・・・。は誰も持っておらず山に眠っていたのですが、コバゴーはもう1枚の当たり牌であるも次巡引かされて、使い切ることもできずに完全にオリることを余儀なくされました。結果は魚谷プロが1300・2600のツモアガリとなっています。
役満テンパイをあっさり崩す精神力、これぞまさに匠の一打。もちろん各団体のタイトル戦でもこういう一打は見られることはあるでしょうが、各団体のトッププロが集まるMリーグのほうがより見られる確率が高いのではないでしょうか。
チーム名 | 最終順位 | 最終P | 予選順位 | 予選P | オーナー | 所属プロ1 | 所属プロ2 | 所属プロ3 |
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ドリブンズ | 優勝 | 594.5 | 4位 | -8.7 | 博報堂 | 園田賢 | 村上淳 | 鈴木たろう |
風林火山 | 2位 | 83.0 | 1位 | 281.7 | テレビ朝日 | 二階堂亜樹 | 滝沢和典 | 勝又健志 |
ABEMAS | 3位 | -147.0 | 2位 | 184.6 | サイバーエージェント | 多井隆晴 | 白鳥翔 | 松本吉弘 |
麻雀格闘倶楽部 | 4位 | -282.0 | 3位 | 39.2 | コナミ | 佐々木寿人 | 高宮まり | 前原雄大 |
Pirates | − | − | 5位 | -99.2 | U-NEXT | 小林剛 | 朝倉康心 | 石橋伸洋 |
フェニックス | − | − | 6位 | -170.1 | セガサミー | 魚谷侑未 | 近藤誠一 | 茅森早香 |
雷電 | − | − | 7位 | -227.5 | 電通 | 萩原聖人 | 瀬戸熊直樹 | 黒沢咲 |
予選で安定した強さを発揮したのは風林火山。余裕のファイナル進出を果たします。ドリブンズも強かったものの途中で猛烈な不ヅキの嵐が吹き荒れてピンチを迎えますが、何とかファイナルに滑り込みました。ABEMASは多井プロが勝ちまくってチームをけん引し、個人最下位の白鳥プロの穴が露呈しませんでした。麻雀格闘倶楽部は好調の寿人プロでゴリ押し、露骨に高宮プロを隠す戦略で予選通過でした。
前評判が高かったPirates(パイレーツ)は、ASAPINこと朝倉プロ以外の2人が不調に見舞われ惜しくも敗退。フェニックスも近藤プロがチームを引っ張りますが他の2人が不調でした。雷電は連盟入りした萩原さんが前半に記録的大敗を喫しますが、後半にしっかり立て直したのはさすが。ところが後半は入れ替わるかのように瀬戸熊プロが沈んでいき、初年度は残念ながら最下位に終わりました。
レギュラーシーズンの上位4チームで争われたファイナルでは、ドリブンズが怒涛の快進撃! 最終日(8日目)を迎えた時点でABEMAS・麻雀格闘倶楽部の2チームの優勝はほぼ絶望的になりましたが、3・4位争いはわずか7.5ポイント差の大接戦。3位にも1000万円もの賞金があるので盛り上がりました。最終日を迎えた時点でかろうじて優勝の可能性を残していた風林火山ですが、最初の半荘で善戦むなしくラスに沈んでしまい、この時点で事実上ドリブンズの優勝が決定。下でも書きますが、こうなったときにどう大会を盛り上げるかは課題になるでしょう。
まずはやっぱり露呈した「目無し問題」。1位以外意味のないルールにしてしまった場合、やはり現状のプロ麻雀の常識で言えば、アガリも放銃もせずおとなしく打つのが常識と言うことになってしまいます。あるいは、大差で負けているチームは「最低満貫」とか、下手したら「最低役満」みたいな縛りができてしまいます。こうなっては面白くありません。
これを防止するには、例えば順位ごとに賞金額を細かく分ける。それも小さくない金額の差を設けることが1つ考えられます。初年度の賞金額は、優勝5000万円、準優勝2000万円、3位1000万円。たいへんありがたい高額賞金なのですが、準優勝・3位の金額を少し削り、例えば5位が300万、6位が100万、7位のみ0円とするとか。あるいは卓トップを表彰したり賞金を与えたりしてもっと意味を持たせるのも良いでしょう(インタビューは行われていましたが)。つまり、目無しでもその半荘だけトップを目指すことを良しとするわけです。
あとは、Jリーグのように降格制度を設けること。ファイナル進出が絶望的になったとしても、降格争いがあるので全力で打ってもらうという効果が期待できます。もちろんこれは、スポンサーとの兼ね合いやチーム数の問題があるので、簡単に導入できるルールではありません。
次の問題は、各プロの打荘数の違い。初年度はレギュラーシーズンの上限が1人40半荘、表彰対象となる最低半荘数が20というルールがありますが、最低打荘数のルールはありません。どのプロを出すかも采配の見せどころではありますが、あまりに打荘数が違いすぎては面白くありません。レギュラーシーズンでの打荘数トップは寿人プロの37、最少は高宮プロの16。どちらも麻雀格闘倶楽部の所属で、前述の通り露骨な「高宮隠し」でファイナル進出を決めたのですが、個人的にはやりすぎと感じます。とりわけ高宮プロのファンにとっては大不満に決まっています。
最後はMリーグそのものの問題点ではありませんが、各団体のルールの違いが原因で、ルールに戸惑いを見せるプロがいたこと。いくつかありましたが、最大の問題はチーした際にさらし間違えたときの取り扱い。Mリーグルールではアガリ放棄ですが、団体によっては打牌前に訂正すれば問題ありません。これは滅多にないケースであるため、自分が所属する団体のルールと勘違いしてしまう事態が発生しました。
「それくらい覚えてから出場しろ」という意見もありますし、「ルールが違うのは、各団体ごとに特徴が出ていて良い」という意見もありますが、私は早急に各団体のルールを統一すべきだと改めて主張します。少なくとも、Mリーグに参加する5団体については、Mリーグのルールで統一してはいかがでしょうか。それが我々アマチュアのためでもあるのです。さまざまなルールが乱立する現状とはおさらばしましょう。