麻雀本の不思議

2014/9/16 up

 福地誠先生のブログに、「アマゾンの麻雀本の売り上げトップ4に、自分ととつげき東北氏の本がランクインしている」という内容の記事が掲載されました。言うまでもなく、お二方ともアマチュアです。「プロは何をやってるんだ!?」という当然の疑問がわいてきます。

 気になって私も、2014年9月8日にランキングを見てみました。4位に井出洋介プロの本がランクインし、とつげき東北氏の「科学する麻雀」は5位に落ちていましたが、大きな変化はありません。囲碁も将棋も、トップ20はほとんどプロが書いた本が占めました。ほかに雑誌や、元将棋連盟職員によるプロ棋士について著した書籍などが上位にランクインしているものの、アマチュアによる定跡本などが上位にいることはありません。アマチュアの書籍が上位を独占するのは麻雀だけです。

 名著「おしえて!科学する麻雀」において、馬場裕一プロが「麻雀の理論面を追求して発表することは、麻雀プロの役割じゃなかったの? それをプロ外の人にされてしまったことに、麻雀プロ界は猛省せざるを得ないよね」と書き送っていたことを思い出します。

 あれから5年半。実績が浅いながらも渋川難波プロ(日本プロ麻雀協会)あたりが、理論面の追求においては頑張っている印象です。ではプロの人数だけは最も多く、「唯一のプロ団体(笑)」を自称する日本プロ麻雀連盟(以下「連盟」と略します)はどうでしょうか。アマゾンのトップ20には、わずか3冊がランクインするのみ。著者の内訳は、連盟1、佐々木寿人プロ1、堀内正人プロ1。堀内は十段獲得の実績がありますが干されてしまいましたし、寿人は連盟がゴリ押ししてテレビには出まくっていますが、主要タイトル獲得実績はゼロです。つまり、トッププロが著した本ではありません。

 敢えて著者と書籍の実名は出しませんが、唯一のプロ団体(笑)である連盟のトッププロ様が書く書籍というのは、結果論的な流れ論ばかりで、全く参考にならないのです。鳳凰・十段の二冠を獲得したこともある、連盟のとあるトッププロ様は「不調の時に好調の相手からリーチがかかった場合、浮き牌がアタリになりやすい」という内容を、何の根拠もなく延々と解説しておられます。

 ちなみにこの本は、2012年発売と比較的最近の書籍であるにも関わらず、アマゾンではトップ100圏外でした。連盟の二冠を獲得したトッププロが、「日本雀ゴロ協会」のアマチュアに負けているのです。一般のアマチュアも、読む価値がない駄本であることをよく認識しているのでしょう。大昔に発売された井出の本が何冊もランクインしているのとは対照的。将棋では羽生善治名人らのトッププロの書籍が上位を占めているのですが、なぜ連盟のトッププロは名著を書けないのか。何とも不思議な話であります。

 連盟本にはロクなものがありません(あくまで個人的見解です)が、前述の佐々木・堀内の著書は比較的良書であると私も考えます(詳しくはレビュー参照)。そういう意味では、アマゾンのランキングは極めて公平で、良著がしっかり売れていると私は思っています。

 東大出身の雀ゴロとして有名な福地誠氏。むろん麻雀プロではなく、一介のアマチュアに過ぎませんが、天鳳名人戦や「四神降臨外伝」にも登場する強豪です。もしプロだったらどのくらいの位置まで上れるか…は永遠の謎ですが、かなりの強者であることに疑いの余地はありません。

 プロが良著を書くとは限らない、むしろアマチュアのほうが名著を多数出版するという傾向がこんなに強いのは、麻雀の大きな特徴と言えるかもしれません。それでも数年前までは本屋の麻雀コーナーには、小島武夫プロのふっるい著書が並ぶなど、プロの本が大多数を占めていたのですが、今はだいぶ傾向が変わりました。私も金子正輝プロの著書に夢中になり麻雀を勉強した人間なので、プロの先生たちに頑張ってほしい思いはあります。しかし、ここ数年の傾向だけ見れば、明らかにアマチュアである福地氏らのほうが、良い書籍を出版しているのは否めない事実です。

 根拠が不明で、実戦で何の役にも立たない流れ論が連発の連盟本に対し、福地氏らの書籍はとにかく実戦的で、読んですぐに役に立つのが最大の特徴です。私は福地氏の著書で値段分の元が取れなかったことは、一度もありません。例えば「序盤は字牌と端牌のどちらを切るか」「片方が4枚枯れの両面待ちでリーチするか」「七対子はション牌と地獄待ちとどちらで待つべきか」「安全牌を持つか手広くするか」といった、昔から誰もが気になっていた疑問を解決してくれるのです。読んでいて感銘すら覚えるほど、明快です。

 上記の手牌は福地氏の良著「麻雀 勝ち組の選択II」から採用しました。七対子の1シャンテンの手牌で1つ暗刻ができたらどうするか。実戦でよく出現する手牌ですよね。七対子テンパイの確率では、ツモ切りがいいに決まっていますが、福地氏は孤立牌をどれか切ってトイトイや四暗刻も見ることを推奨しています。詳しい解説は本をご覧いただきたいですが、「なるほど」と納得させられるものがあります。こういう実戦でよく登場する手牌の解説こそ、我々アマチュアの求めるものであります。

 とある連盟トッププロの「不調の時に好調の相手からリーチがかかった場合、浮き牌がアタリになりやすい」とか、とある連盟会長の「ツイてない人間の待ち牌は場に多く切れ、しかもツイている者の手にアンコで入っている」という薄気味悪い意味不明な理論を延々と解説した書籍とは圧倒的大差があります。まるで実戦に役立たないのですから、アマゾンのランキングでも圏外になって当然でしょう。

 私はプロのことはすごいと思っています。1年もの長きにわたりリーグ戦を戦い、そこを勝ち抜いて決勝戦を戦い、そこでも勝利するトッププロであればなおさら素晴らしいと思います。それゆえに、トッププロにこそ、アマチュアのために参考になる本をもっと出版してほしい。そう願うばかりです。実戦で役に立たぬ本や、自分の実戦譜を持ち出した自慢話の類はいりません。

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