麻雀プロの収入源2021

 2021/2/7up

状況は明らかに改善した

 将棋の藤井聡太二冠(肩書は執筆時点)が彗星のごとく現れ「将棋プロっていくら稼いでいるのかしら」と疑問を持つ方が増えたのと同じように、Mリーグ開始が大きなきっかけとなり、麻雀プロがいくら稼いでいるか気になる方も増えたように思います。ネットで検索して当記事にたどり着いた方もいらっしゃるかもしれませんね。

 ありがたいことに「2015年の当サイトのコラム」当時に比べると状況は良くなっています。その記事から再掲しますが、2012年3月時点で村上淳プロは著書に以下のように記述していました。

 「2010年度は300万円(源泉引かれて275万円)でした。2011年度は20万円(源泉引かれて18万円)。プロ通算15年で獲得賞金は400万円程度だと思います。正直、賞金だけで食べていける麻雀プロは1人もいません。麻雀というゲーム競技はそれだけスポンサーがつきづらいのです」

 2020年10月の黒木真生プロの著書「麻雀番組が10倍楽しくなる本」には以下のように記載されています。

 「有名なプロ雀士であれば、雀荘のゲスト、テレビ番組やゲームなどの出演料、著書の印税などで収入を得ることができます。ほか、雀荘勤務や経営、麻雀教室の運営や講師などの仕事をするか、サラリーマンなどほかに本業を持っている人がほとんどです。Mリーグは1年契約で最低年俸400万円と定められています

 前半部分は2012年当時と全く変わっていませんが、最後がポイント。通常麻雀プロはお金を払って団体に所属してタイトル戦を戦うのですが、Mリーグはお金をもらって対局できるわけですね。今回はこの部分をもう少し詳しく解説してみましょう。

Mリーガーの年収は?

 私はどこかのまとめサイトのように、もったいぶって記事を最後まで無理やり読ませるような真似はいたしませんので、いきなり重要なツイートをお見せします。

 というわけで、多井プロほどの大御所であっても他のMリーガーの年収は知らないとのこと。よって、我々外部の人間がそれを正確に知ることはほぼ不可能なわけで、当記事では収入源について掘り下げてみることにします。

書籍の印税・ゲスト料など

 福地誠氏によれば、超ざっくり言って麻雀書籍の収入は1冊数十万円ほど。もちろん本によって異なるでしょうが、ここでは省略します。

 Mリーガーの中には書籍を1冊も出したことのないプロも数名いて、最も多いプロで5〜6冊といったところ。毎年著書を出版するのは難しく、「主な収入源」というよりもプラスアルファ的に捉えるのが良さそうです。

 雀荘のゲスト料については、数年前にとある雀荘の経営者から直接聞きました。1日1〜5万円とのことでした。強いプロほど高額とは限らず、弱くてもルックスと愛想のよい女流プロの相場は高いのだとか。プロではありませんが、福地誠氏は1万〜2万5千円と2014年に公表しています。

 ただしMリーグは「ゼロギャンブル宣言」を行っており、Mリーガーはオンレートの雀荘での勤務および雀荘経営は禁止されています。ノーレートの雀荘ならOKですが、最近増えてきたとはいえまだまだそういう雀荘は少ないので、雀荘勤務・ゲスト料で稼ぐのは難しくなっています。協会の鈴木達也プロは豊富な実績の持ち主でありながら、オンレートの雀荘を経営しているためMリーグでは指名されていません。

 ほかにはゲームの出演料もあります。堀内正人元プロによれば「1回打って400〜500円くらい」「年々ちょっとずつ条件が悪くなってます」とのこと。これはコナミ(連盟)の麻雀格闘倶楽部のお話。おそらく、この分野に関してはコナミをスポンサーに持っている連盟が一番恵まれているはずです。

 まだ少ないとはいえ、番組への出演もあります。さすがにギャラの金額は不明ですが、最近では競艇・競輪といった公営ギャンブルの番組への出演が多くなっています。麻雀の場合はオンレートは違法ですが、公営ギャンブルは違法ではありませんのでセーフというのがMリーグの考え方。そして、競艇・競輪ファンには麻雀好きも多いので、良い宣伝になると考えているのでしょう。

 堀内元プロによれば、連盟の理事はほとんど仕事をしておらず「それが年金代わり」と発言しています。つまり、理事であるだけでそれなりのお金をもらっているということ。執筆時点では前原雄大・瀬戸熊直樹・藤崎智各プロらのMリーガーが理事を務めています。他団体にもMリーガーの理事はおり、何らかの形で役職の収入を得ていると考えられます。

Mリーグによる収入はいくらなのよ?

 最低年俸が400万円なのはハッキリしていますが、実際にいくらもらっているのかはまったくの不明。プロ野球みたいに推定年俸という情報すらありませんので、余計な推測は控えます。「年収400万円って、サラリーマンより安いんじゃね?」と思った方がいらっしゃるかもしれませんが、これは違います。

 土日休みのサラリーマンなら、週に5日働いて年収数百万円です。これに対しMリーグは、2021年1月を例にとりますと、各チーム9日間ずつ登場しました。つまり、残り22日間はそれ以外の仕事を行うこともできるわけです。ただし、MリーガーたちはMリーグの解説も務めることがあり、それも年俸に含まれていると思われます。

 しかもMリーグの対局は主に平日に行われるので、プロとして最も稼ぎ時の土日を有意義に使うことができるわけですね。だから、「年俸400万円以上+賞金+Mリーグ以外の収入」というのがMリーガーの年収です。月に20日程度もMリーグ以外の仕事ができるわけで、Mリーガーならどれだけ安くとも年収600万円は下らないでしょうし、1500万円とか2000万円、あるいはそれ以上というプロもいらっしゃるのではないでしょうか。

 Mリーグの優勝賞金は5000万円、2位は2000万円、3位は1000万円、4位以下はゼロ。ただしこれは個人ではなくチームに贈られるものなので、単純にチームの人数で割った金額がそのまま得られるとは思えません。2018年度に優勝した赤坂ドリブンズの園田賢プロによれば「あくまで赤坂ドリブンズのオーナー、博報堂メディアパートナーズさんに入るということです。とりあえず、銀座のお寿司に連れてってもらうことになっています」とのこと。

 賞金の分配について質問された時、園田プロはVサインマークをして「これくらい」と発言。つまり、優勝するとプロの取り分は200万円なのではないかと推測されます。賞金の4%ということですね。これが正しければ、準優勝なら80万円、3位なら40万円です。おそらくチームによって分配の比率は異なると思われますが、目安としてはこんなところでしょう。

 安いと思われるかもしれませんが、オーナー企業は宣伝したり公式サイトを作ったり、それなりにコストをかけてくれていることを考えれば妥当なところなのかもしれません。8チーム中3チームも賞金を得られますし、最低年俸400万円にさらに最大200万円がプラスされると考えれば、決して悪いものではありません。それに加え、優勝することでプロとしての知名度が上がり、他の仕事が入りやすくなるという効果も忘れてはいけません。

上位だけでも夢のある世界に

 とはいえ、Mリーグ2020で戦うプロはわずか30名。一方、Mリーグでドラフト指名の対象になる5団体のプロの人数は約1,800名(2021年1月末現在)。「ほんの一部のプロが恵まれているだけじゃないか」という意見もあるかもしれません。

 でもそれって、どんな業界でも同じでは? YouTuber(ユーチューバー)だって億単位の収入を得ている方は、全体の0.0001%にも満たないほんの一握り。それでも、上位の方が活躍しているおかげで、ユーチューバー全体が輝いて見えています(批判もありますがここでは割愛)。

 最初に紹介したように、2012年には村上プロのようなトッププロでさえ生涯獲得賞金が400万円だったのです。それが今や、その400万円が最低年俸になっています。だいぶ夢のある業界になってきたのではないでしょうか。

 「すべての所属プロに最低年俸100万円を保証します、その代わりタイトル戦の賞金はありません」という団体があったとして、夢があるとは思えませんよね? それよりもプロとして目指す高みに夢があるべきだと私は考えます。

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