手役作りを楽しむルール

 2021/8/28up

現在は手役派が明らかに不利

 現在はフリー雀荘でもネット麻雀でも赤ドラありのルールが主流です。1964年の東京五輪の際、五輪のマークに少し似ているを赤くして祝おうじゃないか、というのが誕生のきっかけと言われています。五輪終了後も主流のルールとして君臨し続けています。

 赤ドラがあると、もちろん手が高くなります。フリー雀荘は多くの場合飛び(ドボン)ありですから、手が高くなるとサクサクゲームが進んで場代がたくさん入ってきます。雀荘経営者にとって都合の良いルールなので、今に至るまで採用され続けているのでしょう。

 赤ドラの影響で手役の価値は下がっています。せっせと苦労して三色や一通を作るより、リーチピンフ赤1で一発や裏ドラを絡めて満貫を狙うほうが簡単ですから。しかし、なんだか寂しいと考えている人も多いのではないでしょうか。

一時期流行した完全先付け

 最近ではあまり見かけませんが、完全先付け(完先)というルールがあります。ポンチー鳴きまくる人が強くてうっとうしいことから生まれたルールと考えられています。やっぱり鳴きを正確に使える人は、今も昔も強いのですね。

 完先にも色々なルールがあるのですが、ここでは主流のルールをちょっとだけご紹介します。特徴的なのは「A.片アガり(選択アガり)不可」「B.第一副露で手役が確定している必要がある(後付けの禁止)」です。

 上記の手牌だと、切りのダマテンは三色が確定していないのでが出てもアガれません(リーチすればOK)。ダマでアガりたければ、を切ってという手役を完成させる必要があります。

   (チー)  (ポン)

 続いて上記のような副露手の場合、ポンが先でないとアガれません。第一副露がソウズの場合、という手役が確定していない状態で仕掛けたとみなされ、アガれないのです。

 必然的に完先のルールでは、メンゼンでじっくり手を作ってリーチをかけたほうが勝ちやすくなります(ファン牌の一鳴きで手役を確保することも有効)。ただし、麻雀プロの長老・手役派の田中健二郎プロには「まったくの邪道」とバッサリ切り捨てられています。

ややこしいルールは歓迎されない

 麻雀ファンの総人口を増やすためには、ややこしいルールは徹底的に排除されるべきです。一部のコアなファンだけで喜んでいても仕方がありません。

 当サイトでかつて私が例示した、「メンゼン三色を3翻に増やす」などのアイディアなんかも、上級者の手役派は喜ぶかもしれませんが、大部分の麻雀ファンやこれから麻雀を覚えようとしている方にとっては敬遠されることでしょう。今さらルールを大幅に改正したとしても、ついていける人は多くありません。

 私は高校2年生の時に麻雀を覚えましたが、当時の仲間で採用されていたルールは「食いタンは2翻縛り」という変わったもの。仲間たちは「食いタンドラ3なんかアガっても麻雀が上達しない」と主張し、私も「そういうものなのかな」と当時は何の疑問も抱きませんでした。

 しかし、食いタンにドラ以外の手役を足すのは意外と大変です。重なりやすい手役はせいぜい三色やトイトイくらいのもの。もちろん混一色や一通などとは重なりません。必然的にタンヤオ手の時はメンゼン志向になりがち。おかげで大人になってからも食いタンを作るのが苦手で、矯正するのにだいぶ苦労させられました。

 ほかには赤ドラありに比べて無しのほうが、一発・裏ドラありに比べて無しのほうが、手役の価値は高くなります。しかしそれでも、手役軽視のスピード麻雀が弱くなるとまでは言えません。手役派が有利になるにはもう一工夫必要になりそうです。

手役麻雀を楽しむならリャンシバだ

 現代の麻雀の主流は1翻縛り…つまり、ドラ以外の役が最低1つはないとアガれません。昔(昭和初期頃)はその縛りすらなく、役がなくてもアガることができました。

 その後2翻縛り(リャンシバ)というルールが登場しますが、現在では仲間内のセット麻雀くらいでしか見かけないでしょう。今回はこのリャンシバを令和の時代に復活させることを提唱してみようと思います。

 先ほど書いたように食いタンは他の手役と重ねるのがなかなか難しく、タンヤオ系の手はメンゼン志向になるでしょう。ファン牌のほうは食いタンよりももう1役追加するのは易しいですが、それでもドラ3みたいな「インスタント満貫」は不可能となります。

 副露する場合、1翻の役を2つ以上重ねるよりも、混一色・トイトイといった2翻の手を最初から作るほうがまだ難易度は低いでしょう。必然的に、副露手では2翻以上の手役を追い求めるケースが増えることになります。これも立派な手役麻雀と言えそうです。

 メンゼンならピンフやタンヤオあたりの手を作ってリーチをかければ、それだけで2翻の条件を満たします。問題はツモ・ハイテイ・チャンカン(槍槓)・リンシャンカイホー(嶺上開花)といった偶発系の手役との重複を許可するかどうか。許可しない場合は役なしドラ3のような手牌ではリーチがかけられず、無理やりもう1翻作りに行く必要があります。

 個人的には、重複を認めるのが良いと思っています。リーチ・ツモを認めない場合、以下のような配牌をもらった時にお手上げになってしまいそうです。

 ピンフも七対子もチャンタも遠すぎ、役なしのリーチツモすら認められないのであれば、配牌から国士無双を狙いつつのベタオリが増えてしまいそうです。これでは面白くありません。

 このリャンシバルールを採用したタイトル戦(ネット麻雀でもOK)がネット中継されたら、はたして麻雀ファンはどのような反応を示すでしょうか? 非常に興味深いところではあります。

リーチ麻雀は素晴らしい文化だ

 リャンシバ麻雀にも異論はあるでしょう。例えば「副露の価値が下がるので、ツモ牌の良し悪し=その日の運が成績に直結しやすくなる」とか「ピンフやタンヤオのような難易度の低い手役でリーチをかけても手役麻雀という感じはしない」とか。これはこれで一理あるご意見です。

 中国麻雀は手役が約80もあり、日本の麻雀に比べてかなり多いので「手役を作りたければ中国麻雀を打て」という意見もあります。間違ってはいないのですが、中国麻雀は日本以上にローカルルールが多く、ネットで気軽に打つこともなかなか難しいのです。どちらかと言うと、身近な人とギャンブルのために打つことが重視されています。

 一応中国政府が認定した国際公式ルールというものもあるのですが、それは中国国内での主流のルールというわけではありません。ここでは詳細は省略しますが、ネット麻雀があまり発達していないこともあり、「中国麻雀を打て」と言われてもそう簡単にはいきません。

 日本の麻雀のことは「日本麻雀」ではなく「リーチ麻雀」と呼ばれることが多いです。これは、リーチが日本独自の役であることに由来します。リーチという発想も面白いですが、何より素晴らしいのはネットで手軽に打てること。リーチ麻雀はお金を賭けなくても面白い、ローカルルールは多いものの根幹となる部分は同じ、といった理由が考えられます。

 日本のルールで手役を楽しむには手役の数が少なすぎる気はするのですが、さりとて手役を増やしすぎれば初心者には敬遠されるでしょう。リーチ麻雀の良さを生かしつつ、手役作りも楽しむという方向性が求められます。

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