プロ麻雀団体の統一1

 2015/3/12up

 囲碁も将棋もプロ団体は実質上1つしかありません。将棋には2007年に「日本女子プロ将棋協会(LPSA)」という団体が設立されましたが、基本的には「日本将棋連盟」所属の棋士と同じタイトル戦を戦っています。ところが、現在のところプロ麻雀団体は7つ! もあるのです。囲碁ファンや将棋ファンから見たら、異常にしか映らないでしょう。

 囲碁界最強は井山裕太、将棋界最強は羽生善治であることは誰の目にも明らかです。じゃあ麻雀界最強は誰? と聞かれても、明確な答えが導き出せません。こんな簡単な答えさえ出せないのは、麻雀界の重大な落ち度であり、極論すれば麻雀の普及の妨げにさえなっていると言えます。「プロの世界にあこがれて麻雀を覚えました」という人がどんなに少ないことか。もちろん囲碁・将棋と麻雀では競技の性質が異なりますが、それを差し引いてもです。

 囲碁や将棋は、新聞社が主要スポンサーになっているという事情もありますが、スポンサー以外の新聞にもタイトル戦(7番または5番勝負)の結果が必ず掲載されます。スポーツ紙にだって掲載されます。将棋界を長く牽引してきた谷川浩司九段が、2014年に32期守り続けてきたA級から陥落したときには、かなり大きなニュースになったものです。

 ところが、プロ麻雀界の動向については、一般紙はもちろんスポーツ紙にすらほとんど掲載されません。2013年に日本プロ麻雀連盟主催の「十段戦」で、漫画「天牌」に登場する「稲垣名誉八段」ばりの難癖をつけて堀内正人プロを失格に追いやったときにはネットが炎上し、「痛いニュース」に取り上げられたりもしましたが…。肝心のタイトルの行方についてはほとんどの麻雀ファンが興味を持っていないのが実情です。

 先に書きますと、私はどんな障壁があろうと、プロ麻雀団体は極力統一の方向に向かうべきと考えています。理由は後述しますが、まずはどんなプロ団体があるのか、簡単に紹介しようと思います。

日本プロ麻雀連盟(連盟)

 麻雀界のジャイアン。後述する最高位戦から分裂して1981年に誕生しました。プロの人数だけは最大を誇りますが、堀内プロの話によれば、2014年は受験者全員がプロ試験に合格したとのこと。会長を務める森山茂和氏の意に沿う打ち方をしないと叱られるというおかしな団体です(森山プロ本人の発言による)。モンド杯や麻雀最強戦では、参戦プロの6〜8割程度を連盟プロで占め、数の力で優勝をもぎ取ることで有名。天鳳名人戦や四神降臨など、平等な人数での他団体との対戦には基本的に応じません(他団体主催のタイトル戦に参加することはありますが)。

最高位戦日本プロ麻雀協会(最高位戦)

 1976年設立で、プロ麻雀団体では最も古い歴史を持ちます。1981年の八百長騒動を始め、色々な騒動が起こりましたが、それを幾度も解決してきて現在に至ります。歴史ある団体ながら、1997年にいち早く一発・裏ドラを採用したことも評価したいです。連盟や協会がルックス重視の女流プロを前面に押し出す傾向が強すぎるのに対し、最高位戦の女流プロは真面目に麻雀に取り組むという印象を私は持ちます。

日本プロ麻雀協会(協会)

 2001年設立で、最高位戦から分裂する形で誕生しました。古い常識にとらわれず、最新の麻雀を打つプロが多いことに好感を持ちます。一方でゴタゴタも多く、初代会長の土井泰昭氏を除名し、土井プロから訴訟を起こされるという残念な事件もありましたし、鍛冶田良一プロをAリーグに残留させるために、妻の崎見百合プロがメンツ中抜きで差し込むという露骨な八百長もありました。鍛冶田プロが理事であるためか、これに対する処分はなく、麻雀ファンから多くの批判を浴びました。

麻将連合-μ-(ミュー)

 1997年設立で、井出洋介プロら最高位戦出身のプロが多数在籍しています。連盟などが資金目当てにプロを増やしまくっているのに対し、ミューでは厳しい試験を課しています。最初の試験に合格してもツアー選手となるにすぎず、そこからさらに上の「認定プロ」になるのはなかなか難しいものです。2015年1月現在、認定プロはわずか20人ですが、まさに「少数精鋭」という言葉がピッタリではないでしょうか。

RMU(Real Mahjang Unit)

 2007年設立で、連盟で主要タイトル獲得経験がある土田浩翔、多井隆晴、阿部孝則、河野高志らが連盟から独立する形で誕生しました。こちらもミューと同様、プロの認定は厳しく行っており、レベルを問わず人数だけ増やしまくる連盟とは正反対の運営方針を採用しています。ライセンス制で、2015年1月現在、A級以上のライセンスを持つプロはわずか6名です。

その他の団体

 101競技連盟は、1982年にスタート。かなり独特なルールで、極度な守備重視の対局になりがちですが、味わいもあります。飯田正人、金子正輝らのトッププロが登録していたことでも有名ですが、現在は残念ながら存在感が薄れています。
 日本プロ麻雀棋士会は、女流雀士の草分け的存在とも言える高橋純子氏(かつて連盟を退会)が会長を務める団体。かつては鈴木たろうプロ(2005年に協会に移籍)が所属していたことで知られます。
 麻雀共同体WW(ダブル)は、連盟を退会した板川和俊プロが2015年に設立した新しい団体。プロ団体なのかどうかは現在のところ不明ですが、板川プロの実力と境遇を思えば、今後の発展に期待したいところです。

 と、ここまで見てお分かりの通り、麻雀界はアメーバのような分裂の歴史をたどっていることがよく分かります。団体の統一と分裂についてさまざまな議論が行われているという点においては、プロレス界に似ているかもしれません。しかしプロレスは分裂によるメリットもかなり感じられますが、プロ麻雀界においてはデメリットのほうが大きいように思えるのです。

 メリットは、団体ごとによる特色を出すこと、大団体の下っ端より小団体のトップになることに魅力を感じるプロのモチベーション維持、といったところでしょうか。ただしプロレスは新日本・全日本・ノアがどれもそれなりの注目度で新聞に取り上げられるのに対し、麻雀はそうではないというところには注意が必要です。残念ながら弱小麻雀団体でタイトルを獲得しても、注目度は極めて限定されているのです。

 これに対しデメリットはたくさん挙げられます。「分裂による各団体のレベル低下」「最強が誰なのか極めて分かりにくい」「いつまでたっても統一の麻雀ルールが作られない」などなど。どれもこれも麻雀の発展にとっては致命的ですが、とりわけ統一ルールがいまだにできていないのは大問題です。だって、初めてのフリー雀荘に行くたびに毎回ルール説明を聞かされますよね? 個人的には相当ウンザリで、早くルールくらいは統一してほしいと思います。

 1ページのコラムを目指しておりましたが、長くなりすぎるため、分割することにします。続きはまた次回とさせていただきます。なるべく早いうちに更新したいものですが…。

 

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