連盟は凶悪なるアナログ教

 2013/4/21up

 麻雀には2種類あるそうです。ひとつは「デジタル麻雀」、もうひとつは「アナログ麻雀」。後者をもっと突き詰めたものに「オカルト」と呼ばれるものがあります。念のため解説しておきましょう。

 「デジタル麻雀」とは、1局1局を独立したものと考え、その場面において数学的・確率的に最も最善と思われる打ち方をすること。「アナログ麻雀」はその逆で、前の局の結果を現在の局に生かそうとする打ち方。「オカルト」はもっとすごくて、例えばサイコロの目や座る位置の方角などを麻雀に生かしたりします。ここではオカルトは省略して、デジタルvsアナログの比較をしてみましょう。例えば東1局で満貫を放銃した後の東2局南家の手牌が以下のものだとします。


 デジタルならを切っての即リーチ以外あり得ません。数値的に、即リーチが得であるとすでに証明されているからです。アナログだと答えが割れ、「前の局で満貫を放銃したから、流れが悪い。ここは2,000点でも確実にアガっておきたい」とダマテンにする考えが生まれるのです。

 しかし、ここでのダマテンは個人的には賛同しかねます。麻雀は、長い目で見れば必ず全員に平等に手が入るものです。リーチすれば一発や裏ドラ次第で満貫を狙えるチャンス手を2,000点で終わらせるのは、非常にもったいないことです。満貫が狙えるチャンスを2,000点で終わらせるから、負け組になるとさえ言えるのではないでしょうか。もちろん南場でトップ目の時などはダマにすることもあるでしょうが、東2局であれば即リーチ以外あり得ません。

 私は麻雀には流れがあると思います。麻雀は4人でやるゲームですが、1人ずつ順番に良い配牌が入ることはまずありません。普通は2〜3局良い配牌が続いたり、半荘を通してずっと悪い配牌になったりと偏りが起こるものです。その偏りのことを「流れ」と呼びます。

 しかし、流れを戦術に生かすのは困難です。ほとんど不可能と言っていいかもしれません。最近ではかなり減りましたが、それでもいまだに「流れをもとにした戦術本」を出版するプロ雀士がいるから驚きです。例えば、以下のような記述はすべて大嘘です。信じてはいけません。

「今は流れが良いから、何を切っても放銃にはならない」
「流れのない下家が親だから、稼ぐチャンスだ」
「流れが悪いから、テンパイだけどここはオリよう」

 これらはいずれも、根拠がありません。プロの誰かが根拠さえ示してくれれば有力な戦術として成立する可能性もありますが、現時点では信頼に足るものではありません。ところが、世の中には根拠もないのに頑としてアナログにこだわるプロ雀士がいるから驚きです。例えば、悪書として超有名な森山茂和プロの著書「キミも勝ち組になれる!」の前書きには次のように書かれています。

「皆さんも経験はありませんか? 自分の方が確率的には正しい打ちかたをしているはずなのに、間違った打ちかたをしている人に負けてしまう。丁寧に一生懸命打っているのに、配牌の差でどうもがいてもアガれない…。これは全部、ツキの悪戯なのです。麻雀の打ちかたが多少不器用でも、ツキの流れを一度つかんでしまえば、ほとんど無敵状態になってしまいます。それが、麻雀というゲームの本質です」

 ここまでいくと重症で、もはや救いようがありません。森山氏が約30年もの間、鳳凰・十段というビッグタイトルに一度も縁がなかったのも納得です。近所の中古屋で100円で売っていると思いますので、本の内容が気になる方はぜひご覧ください。反面教師として大いに役立つと思います。中身の酷さについては、後日書く機会があれば紹介しようと思います。

 さて、誤解されないように書いておきますが、私はアナログ麻雀を全否定したいのではありません。一部のアナログ派のベテランプロ雀士が、汚い言葉でデジタル派の悪口を言いまくる悪しき傾向を苦々しく思っているのです。「プロ」としての知性も教養もまるでない、野人のような人間が世の中にはいるのです。実に恐ろしいことではありませんか。

 それでは、日本プロ麻雀連盟(以下「連盟」と略します)に所属する「プロ」の知性の欠如ぶりをとくとご覧いただきましょう。今回は、悪名高い第28期十段戦(2011年)から拝借させていただきました。解説は十段戦予想でも傍若無人ぶりをいかんなく発揮した小島武夫氏と前原雄大氏のお二方です。ちなみに、数あるプロ団体の中で唯一アナログ派が圧倒的多数を占める連盟の中で、若手の堀内正人十段(当時)は数少ないデジタル派です。

 カン  ツモ  ドラ
 全12回戦の中の11回戦目、堀内が上記のリーヅモ純チャンドラ1のハネ満をツモアガりました。は他家に3枚持たれており、ラス牌だったのです。解説していた小島は次のように発言しました。

「不思議なマジックだよ。何あるか分からんよなあ、素人は」

 将棋や囲碁などの解説で、ここまで対局者を侮辱するシーンを私は一度も聞いたことがありません。こんなことでは、麻雀プロは将棋や囲碁のプロのような市民権を得ることはないでしょう。連盟はくだらないアイドル雀士を量産する前に、やるべきことがたくさんあるはずです。

 その後対局が進み、森山茂和のプロとして最低最悪な目無しリーチが炸裂し、迎えた最終戦のオーラス。トータル2位の堀内は同トップの瀬戸熊直樹にハネ満直撃をしないと逆転しません。一発裏ドラ赤ドラなしの競技ルールですし、配牌からベタオリすれば良い瀬戸熊は絶対に放銃しませんから、事実上不可能と言ってもよいほどの厳しい条件です。堀内の負けを願っていた小島は大喜び。「無理でしょ」「もう終わりだよ」「グッフッフッフ」と緊張感のカケラもない発言を連発。逆転に向けて真剣に手作りをしている堀内を馬鹿にする最低な連中なのでした。

 連盟ではデジタル派であるというだけで、生中継でボロクソに叩かれるという恐ろしい組織なんですね。ヒトラーのナチスドイツか、現代なら北朝鮮みたいな恐ろしい「アナログ教」の宗教集団です。もちろんアナログが悪いのではなく、連盟所属のトップ雀士の人間性が突出して低いのが大問題なのです。当然ながら、連盟には不幸にも上記の対局を見せられた視聴者からの抗議が殺到いたしました。

 とりあえず、連盟は揃いも揃って「素人」に惨敗する、レベルの低い集団であることだけはよく理解できました。

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