黒に近い灰色の三味線判定

 2013/11/19up

 第28期十段戦(2011年)で日本プロ麻雀連盟(以下「連盟」と略します)が醜態を晒したのは麻雀ファンの記憶に新しいところでしょう。この時は小島武夫・前原雄大・荒正義らの最低な解説も話題になりました。この時は善良なるファンからの苦情が連盟に殺到したためか、翌年の十段戦は急におとなしくなりました。上層部から「絶対に失言するな」と厳命が下っていたことは、想像に難くありません。私が友人から見せてもらった映像は、藤崎智や滝沢和典がボソボソと淡々と解説しているというつまらないものでした。

 そして第30期十段戦(2013年)。1日目の森山茂和の最低な解説も話題になりましたが、もっと大きな出来事によってかき消されてしまいました。堀内正人プロの失格です。問題の動画はこちらから。ただし、大半は連盟側の言い訳なので見るのは無駄です。2分10秒あたりから流れる、問題の場面だけ見ることをお勧めします。以下では、状況の説明を簡単にしておきましょう。

 2日目・8回戦目の東4局(※この半荘は現在公式記録上は抹消されており、最終日の対局が8回戦目となっているようです)。小島がのシャンポンで先制リーチ。瀬戸熊は一歩も退かず、ドラを勝負して小島の当たり牌であるタンキのテンパイとします。そのドラを対子にしていた堀内も食い仕掛けを入れ、の片アガリながら7,700点のテンパイを入れました(※連盟は30符4翻を満貫に切り上げません)。その後瀬戸熊は堀内の当たり牌であるを引かされ、テンパイ崩し。そして堀内は以下の手牌になりました。

  チー  ツモ  ドラ

 は安全牌。堀内は手の内のと入れ替えて空切り。瀬戸熊が次巡にテンパイ復活を果たし、長考の結果、テンパイ維持のためにを勝負して堀内への放銃となったのです。この時堀内がを引いたときに大きな溜め息をつき、そして手の内のを卓にたたきつけた、というのが連盟上層部の言い分です。しかし対局時に審判長を務めていた藤原隆弘はこれをスルーし、なぜか対局が終わってから問題になったわけです。藤原など森山のロボットも同然と思われますから、対局当時は何の問題も感じておらず、後になって森山に利用されたという可能性はありそうです。

 上記の動画を見ていただければ皆様お分かりだと思いますが、堀内がを悔しそうに卓に叩きつけたと断じるのは無理があります。また、度を越したため息をついているかどうかは、動画では全く判断できません。つまり、堀内の行為はグレーなのです。白に近いグレーと言えるかもしれません。たしかに疑わしい行為をしたと言われればその通りかもしれませんが、これで即失格というのは乱暴にもほどがあるでしょう。

 野球にもビデオ判定が導入されましたし、サッカーでもFIFAが映像を見て誤審であると分かればそれを認めることもありました。しかし、映像を見ても分からないグレーなものを黒と断じて失格処分を命じるなど、私は聞いたことがありません。

 上記の動画での連盟(藤原)の説明は「このことは、立会人の私が、卓のすぐ近くで見ておりましたので、間違いありません。また、一緒に戦っていた選手の皆さんも、同様の認識をしておりました。(中略)以上のVTRでは、堀内プロの表情や溜め息はわかりませんが、実際には、私がこの目で見ておりました。そして、本来なら、私が対局をその場で止める権限を持っておりますので、そこでストップし、審議とするべきでした。(後略)」とのこと。堀内が失格・謹慎処分になったのに対し、レッドカードを出すのを怠った藤原への処分は、現時点では発表されていません。何人かの人が連盟に問い合わせたところ、「これ以上説明することはない」と冷たい対応をされたとのことでした。

 また、「日本プロ麻雀連盟理事会は、全員一致で、堀内プロの失格を決議いたしました」とも説明しています。動画を見て分からないものを全会一致で決議するって、いったいどんな組織なんでしょう。寒気がします。普通は「失格はやりすぎ。厳重注意くらいにすべきではないか」という意見が出てきそうなものですが。自分の意見もロクに言えない組織であろうことは、容易に想像がつきます。

 連盟の裁定は真っ黒に限りなく近いグレーですが、堀内が上層部に嫌われていることは確実です。2年前の十段戦では、解説者の小島が堀内に対し「不思議なマジックだよ。何あるか分からんよなあ、素人は」と発言しています。また、今回の十段戦では、1回戦目で解説者の森山が堀内に対し、
「堀内君は仕掛けに責任を持ってない。都合が良ければ勝とうという考え方。それはプロじゃない」
「あんな打ち方をしても、こういうふう(トップ)になっちゃうから・・・」
「堀内君は僕に言わせると、アマチュアの延長でしかない」

 と発言しています。期待の若手に敢えて厳しい言葉をかける、というのはよくありますが、タイトル経験者であるプロをつかまえて「お前はアマチュアだ」と言うのは、激励でも何でもない、単なる個人攻撃であり、侮辱です。普通に堀内が嫌われていると考えるほうが自然でしょう。実績を残しており雑誌での連載が人気であるにも関わらず、モンド杯にはまったく出場させてもらえませんし。

 以上を総合すると、こういう事実が浮かび上がってきます。「連盟では対局者3名と審判員が黒と言えば、灰色だろうと金色だろうと、何でも黒になる」。ついでに言えば「そこには森山会長ら上層部の強い意向が働いている可能性が高い」。こういうことになりますね。

 今の連盟には何も期待していませんので、当然失望もしていません。ただ、こんなくだらないふざけたニュースが、麻雀界全体の出来事として、色々なメディアを騒がせるのは不愉快極まりありません。とりあえずプロの数だけは最も多く、また主要メディアを押さえて影響力も最も強い麻雀団体なのですから、最低限の見識を持った行動をしてもらわないと非常に困ります。連盟のせいで、麻雀全体が悪く言われてしまうのは心外です。

 連盟にクレームを入れても馬の耳に念仏状態で、無駄なのは分かりきったことです。私にできることは、連盟を批判することももちろんですが、麻雀の魅力をもっと発信すること。こう決意を新たにしました。そういう方面のコラムはほぼ準備しておりませんでしたので、これから取りかかろうと考えています。

HOME