森山プロの暴言

 2020/2/22up

 すでにツイッターなどでご覧になっている方も多いかもしれませんが、森山茂和プロが最高位戦の浅井裕介プロの打ち方に対して一方的に批判したあげく「麻雀やめろ」と生中継で暴言を吐いた件が話題になっています。

 浅井プロは辞めないことをツイッターで宣言しており、最悪の事態は避けられました。

問題の経緯

 8人が2卓に分かれ、それぞれ上位2人ずつが決勝進出、決勝の勝者が最強戦本選出場といういつものルール。問題は南2局で起きました。持ち点は回り順に、鈴木たろう33,700、近藤誠一23,700、前原雄大30,900、浅井11,700。近藤プロの親リーチに対し15巡目に浅井プロが以下の手牌で、リーチ者である近藤プロが切ったをポンしたのです。これに解説者である森山プロがすかさずかみつきました。

  出る  ドラ

 森山プロが「ここでこんな形テン(形式テンパイ)の点数が必要なの?」と発言したとたん、すぐさま近藤プロが高めのをツモアガリ。裏ドラが2枚乗って親ッパネとなったわけですが、自分の打ち方と異なるものを全く受け入れられない森山プロはなおも浅井プロへの批判を続けます。

森山「馬鹿なことしたね。これは近藤君が勝ったんじゃなくて、勝たせるほうがいけないよ。形テンとってツモらせるほうが悪いよ。本当の6000オールになったってのが笑うね。もう自分があの〜、例えばあそこでと打ってたら相手は死んで終わってたんだから(※)。それをオリて今度形テン。まあ麻雀をやめたほうがいいね
※詳細は省略しますが、一度オリてから形テンに向かったことを批判しているものと思われます。

 次局の話にうつろうとする梶本琢程プロを制し、なおも森山プロは収まりません。
森山「今なんかは麻雀を壊してる行為だよね。だってせっかくみんなギリギリの戦いをしているのに、動く必要…。要するにあれが例えば鳴いて満貫あったとか、そういうのは分かるよ。ただの形テンでしょ。ねえ、その形テンが必要な局面じゃないもん。こういうのはたろう君にしても前原君にしても、なんかつまんなくなっちゃうよね。まあ近藤君は別にしっかり打ったからいいんだけど」

 対局終了後の総評でも森山プロが吼えます。
森山「勝者を敗者が作るのはやめようよ。勝者は勝者が自分の力で作ろうよ。もちろん近藤君は自分の力で勝ったんだけど、あの形テンはいらないよ。まったく不要。だからそういうことが蔓延してて麻雀をつまらなくしてるから、それは今麻雀プロを目指している人とか、麻雀をやっている人たちにプロの技を見せる、それが何かということをもっと深く考えてほしいと。近藤君の勝ちは素晴らしかったんだけど、それがすごく残念だったんで。浅井君若いし、僕も放送の中でキツイことを言ってプロ辞めたほうがいいよって言ったんだけど、それは別の期待も込めて、変わってほしい。プロの世界は僕なんかも始めて何十年もたちますけど、今後もっともっと伸びてほしい、まあそういう意味でも麻雀の奥深さを感じ取って伝えるような麻雀をみんなに見せてほしいと思います」

 最後はフォローにもなってないフォローをちょっと混ぜて、勝者をたたえる場を凍り付かせて終了しました。

森山プロをちょっとだけ擁護する

 一応森山プロに対しても、情状酌量の余地が完全にゼロというわけではないので、そこをまず書いておきましょう。

 麻雀に限ったことではありませんが、当たり障りのないことしか言えない解説は面白くありません。ダメなものはダメ! とハッキリ指摘できる解説者は有能だと思います。

 少数ではありますが「森山は面白いから呼ばれるのだ」「誰にも忖度せずハッキリ言ってくれるのは痛快だ」という擁護意見も存在します。また今回の森山プロの解説は、20年くらい前までであれば、ここまで大きな問題になることもなかったでしょう。同じことを考えるプロは、今よりもずっと多かったはずです。

でもやっぱり解説とはとても呼べない

 ただ忘れてならないのは「森山プロは30年以上前の古い常識をもとに、現代では時代遅れとなっている考え方を一方的に押し付け、しかも浅井プロにまともに反論の余地すら与えずに解説暴言を吐いた」ということです。当たり障りのない解説がいくら面白くないといっても、これは明らかにやりすぎではないでしょうか。

 森山プロの解説は現代では完全に時代遅れ。形テンの重要性はここ数年で大幅に見直されており、状況にもよりますが無筋を強打してでもテンパイにとったほうがよい場面はけっこう多い、という考え方が現在は有力になっています(通っていない筋の本数などで変わってきますが、ここでは詳細は省略します)。

 囲碁や将棋の世界では、ベテランプロが若手に頭を下げて教えを請うことすら当然のように行われています。むろん麻雀でもそうしているプロもいますが、第一線から遠ざかっている森山プロはご自身の解説が時代遅れであることにも気づかず、視聴者を不快にさせるような解説暴言を行っているのです。

 おまけに「麻雀をつまらなくしている」とのたまう始末。そういえば森山プロの著書には「○○では麻雀がつまらない」という表現が随所に出てきますが、プロたる者が勝敗を度外視して、面白いとか面白くないというレベルで麻雀を語るのはどうなのでしょうか? まして面白くないかどうかは完全に個人の主観に過ぎません。森山プロの価値観に合わせる必要など全くないのです。

 ちなみに森山プロは、2011年の第28期十段戦において「敗者」であるにも関わらずピンフリーチをかけて、瀬戸熊直樹プロという「勝者」を作り出しているのですが、もう忘れちゃったのでしょうかね。これこそ「敗者が勝者を作る」の最たるものなのですが。

 誰も逆らうことのできない社長が部下に対し「お前なんかやめてしまえ」と言う行為が冗談で済んだのは昭和時代までのことであって、令和では立派なパワハラ行為です。まして本人に直接ではなく、全国に生配信されている中継の中で言うなんて。この解説悪口を受け入れられるファンも少しはいるかもしれませんが、普通は嫌悪感を持つのではないでしょうか。

 一応森山プロは対局終了後に「期待を込めて」の発言だったと言い訳していますが、百兆歩ほど譲って本当に期待を込めての発言だったとしても、期待を込めていたら何を言っても許されるわけではありません。同じ意見がすでに浅井プロのツイッターに寄せられてはいますが、浅井プロは何も変える必要がありません。形テンを取るのが得だと思うなら、これからもそうすればよいのです。研究の結果やっぱり損だと思うのなら、その時に打ち方を改めればよいと思います。面白いとか面白くないという低いレベルに付き合う必要はありません。

※森山プロは自らの発言を失言と認め、2月中に最高位戦と浅井プロ本人に対して謝罪していますが、後日別件でまた最高位戦に対して難癖をつけて恥をかきました。詳しくは「こちらの記事」をご覧ください。

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